太陽が地平よりのぼり、空に弧を描いて高みに達し、また地平へと沈んでいく——
すると世界は暗くなり、月と星が輝きだす。
はるか昔から絶えることなく繰り返されてきたそのリズムを、私たちは「1日」と呼びました。
「1日」は、この星が誕生してから、いったい幾日めぐってきたことでしょう。
私たちの祖先は天体の運行からこの世界の律動を知り、
より効率よくみんなそろって活動するために、
その土地のリズムを刻むそれぞれの時計とカレンダーを発明しました。
しかし現代の私たちは、24時間・365日の唯一絶対的な世界共通時間の中に生きているように見えます。
時を知るのに、太陽や月のかがやき、空気や土のあたたかさは必要なくなりました。
世界は数値化されてとても間接的で遠くなり、風景は均質化され、情報が加速していく。
私たちのこころとからだは、どこかに置き去りにされていくかのようです。
天体の運行から見れば確かに、約24時間・約365日で、この世界は進んでいるのかもしれません。
しかし地球上には、1年を210日とする地域や、1日の始まりを日没と考える人々もいます。
さらにいえば、それぞれの土の上に生きる私たち一人ひとりのこころとからだ、
動植物の一つひとつの命には、もっと多様で有機的な、
ゆらぎ・とどまり・ただよう、測りようもない時間が流れているのではないでしょうか。
本展では、この星が生み出す律動と、そこに生きる命が描き出すさまざまな律動をたどります。
そして、人間がそれぞれの土地で積み重ねてきた時間、
忙しさと自由が混在する現代の時間を振り返りながら、変わらずにめぐってくる、大きな時間を想います。
もしこの世界の始まりが「時」の始まりだとしたら、
新たな「時」のとらえ方が、新たな世界のとらえ方を生むかもしれません。
時という視点で、世界を見つめる展覧会です。
展示内容(一部)
星の律動・生きものの律動
世界の日時計(小野行雄氏所蔵)
太陽と月の神話・造形
時と人間のこれまで
世界のさまざまな土地の一日の映像(国立民族学博物館製作)
時の採集箱
ヒマの部屋
時の大河
この展覧会の様子を特集ページでレポートしています!
ぜひご覧ください。