時間が食べものをおいしくする不思議―。おいしさは、新鮮な食材や調理のテクニックだけからつくられるのではありません…。ともすれば賞味期限ばかり気にしがちな都会の消費生活を少しはなれて、違った角度から「食の豊かさ」を見つめなおしてみませんか? 

昭和の最後に電気が通ったという、岩手県早池峰山の麓に、タイマグラという土地があります。そこで撮影された記録映画『タイマグラばあちゃん』(監督:澄川嘉彦/2004年)には、自らの手で食物を育み、収穫を喜び、保存しておいしく食べるために手間暇を惜しまない暮らしが描かれています。その営みは、古来から日本人が紡いできた「保存食の知恵」にあふれています。

展覧会では、この映画に描かれたタイマグラの生活を紹介しながら、映画にも登場する味噌、特に「麹菌」にスポットをあて、時間の流れが紡ぎだす食の魅力に迫ります。麹の働きや味噌の種類などを解説しながら、顕微鏡やシャーレで麹の実物を覗いていただいたり、仕込み方や熟成期間の違う味噌の香りくらべ、麹を使った食材の料理レシピ(持ち帰り可)の紹介も行います。

見る・嗅ぐ・知る・生活に活かす―。日々の「食にかける時間」や「食事の時間」を見つめなおすきっかけを得ていただく試みです。


■シネマ&トーク「映画に見る食の時間」
ドキュメンタリー映画『タイマグラばあちゃん』上映後、タイマグラから澄川監督と山代さんのお二人を招いて、「人の暮らしにかけがえのないもの」「食の豊かさ」について、時間をベクトルに来場者と共に考えます。タイマグラ味噌の味見つき。
日時:12月12日(土)
会場:セミナールームAB
参加費:500円
定員:申込先着80名
ゲスト:澄川嘉彦(映画監督)×山代陽子(タイマグラ民宿フィールドノート)×中山晴奈(NEXT KITCHEN)
上映作品『タイマグラばあちゃん』
(監督:澄川嘉彦、2004年、110分)
“人が自然と対話しながら暮らした最後の世代”という、向田マサヨさん(2002年没)こと『タイマグラばあちゃん』の暮らしを描いたドキュメンタリー。ばあちゃんの暮らしには、昭和の最後まで電気もなく、私たちが当然と思う「便利なモノ」もありませんでした。ただ、木々や風、生きものが発する自然の声に満ち溢れ、さまざまな生命たちと共に生きる安心と喜びが、その暮らしを豊かに彩り、満ち足りた笑顔を生みだしていた様が映画に描かれます。科学がどんなに進歩して暮らしが便利になっても、変わらない暮らしの中で、ばあちゃんが守ってきたものとは…? 
※タイマグラ:岩手県川井村にある戦後開拓地。アイヌ語で「森の奥へと続く道」の意。昭和の終りに電気が通った地と言われている。


■食のワークショップ「時間がおいしくする食のワークショップ」
タイマグラばあちゃんの保存食づくりにならいながら、目に見えない麹菌を、科学と食文化の視点から探ります。赤・白・なめ味噌の3つの仕込みに挑戦して、日本の麹文化の奥深さを体験します。仕込んだものは各自持ち帰って自宅で熟成させます。
日時:12月19日(土)・20日(日)※各1日完結 
会場:ワークショップルームA
講師:中山晴奈(NEXT KITCHEN)ほか
対象:高校生以上
参加費:1,500円(抽選20名)