トルコの女性は宗教上の理由からスカーフを巻く文化があります。日々着用するものであるからこそ、女性たちはスカーフにこだわりを持ち、自分の個性を表現する手段の一つとしても活用しているのです。
トルコ・トカットの木版〈バスク〉展では、版にインクを付け布に押すバスクという技法を用いてプリントされたスカーフを紹介しています。
会場内ではトルコにて伝統手工芸のお店を営む野中幾美さん協力により、伝統的なモチーフの木板や、それを用いたスカーフやテキスタイルの100点以上を、ガラスケースや壁、天井などの会場全体で楽しむことができます。色やデザインも多種多様であり、見ていて飽きることがありません。
通常スカーフは頭に直接着用することが一般的ですが、このように花嫁は頭飾りとして帽子の周りに巻きつけることもあるそうです。
数あるスカーフの中でも特に私が印象的であったのがこのスカーフです。デザインや色合いが可愛らしいだけでなく、植物モチーフが多いスカーフのなかで月や星などが描かれていることに興味を抱きました。このスカーフはカンディルリと呼ばれるデザインで、描かれている容器のようなものは、カンテラという宗教儀式に用いるガラスやブリキのランプで、現地の方にとっては重要な意味を持つ物だそうです。
会場では多くの方が自分のお気に入りのスカーフを見つけ写真に収めている様子が伺えました。お子様連れの方もいらっしゃり、お子様も沢山のスカーフを楽しそうに眺めている様子でした。色々な種類があるため年齢や性別に関係なく、好みのスカーフを自由に見て楽しめることも今回の展示の魅力だと思います。
来場者の方からは、日本の版画に通じるものを感じる一方で、版画とは違い1枚に多くの版を用いる点に魅力を感じているという御意見も頂きました。
会場内では、日本の手ぬぐいにバスク職人の方が木版プリントしたバスク手ぬぐいも展示されています。日本とトルコの文化のコラボレーションは展示されている他のスカーフとはまた異なり、新しさと馴染み深さが混じり合った作品です。
機械による印刷が主流になった現代で、バスクの芸術性や技術力は国内外で再評価されています。手工業ならではの一枚一枚の違いや、デザイン性の高さはハンドメイドや一点ものがブームの日本においても魅力的に感じるでしょう。
一方で生産効率の高さから機械生産の割合は高く、バスク職人は減少傾向にあります。高い技術力や芸術性を絶やさないためにも、伝統工業技術の継承の重要性について、再確認するきっかけとなりました。
皆さんもお気軽に足をお運びいただけたら嬉しいです。