「時間をめぐる、めぐる時間の展覧会」開催中
多様な時間の手ざわりを確かめながら、
これからともに歩んでいく時間をさぐる展覧会。
3月5日にオープンした、「時間をめぐる、めぐる時間の展覧会」。
気が付けば、会期が残すところ、今日を含めて7日間となってしまいました。
ほんとうに、時間の経つのは早いもの。時間に関して一杯考えてきたはずなのに、
考えるだけで時間が過ぎてしまった気がします。
この展覧会は、「時間に正確に」「少しでも早く」「いつでもどこでも」が美徳のようになっている現代社会の中で、
時間とはそもそもなにか、そして世界にはどれほど多様な時間が流れていて、
変わらずにめぐってくる存在を心待ちに1年を過ごしているか
そして私たちはこれから、どんな時を刻み、残していけるかということを
来場者とともに考えてみたいと思い、sesensitkaさんとともに企画しました。
展覧会ではまず、「星の律動・生きものの律動」と題し、
地球と天体の関係性から、1年/1日/ひと月の律動が生まれ、
そして寒暖の差や日照時間の変化を生きものたちがいかに感じ取り、
先手を打って行動しているかを紹介しています。
今日雨が降るかどうか、雲行きを見ずにスマホを見て知る私たちですが、
同じ星の上に生きている人間も、本来もっと天気や季節の移り変わりに敏感な生き物だったのではないでしょうか。
また、人間たちが、圧倒的な力強さで輝く太陽と月をどのような思いで見上げていたかを探るため、
太陽と月のプリミティブな造形や、各地に伝わる神話を紹介しています。
そこから、世界のはじまりや、時間のはじまりにも想いを馳せることができます。
狩猟採集生活から農耕に移行する頃とほぼ時を同じくして
日時計などの時間を計るものや、夏至や冬至を知るための巨石群が作られるようになります。
その場所だけで必要であった暦や時計が、その後、産業革命や大量消費社会を迎え、
世界基準として画一化され、絶対的なもののようになっていったか。
そしていままたインターネット社会の到来により、時に対する意識が変化してきたか。
そのような「時と人間のこれまで」を、一望できるような
「時の精霊」と題した壁画も展示しています。
これは、デュフィの「電気の精」という作品にインスピレーションを得て、
共同企画制作のsesensitkaさんが構想し、描いた大作です。
「100年プリント」や「ルンバ」などのポスターや新聞広告から、
半永久をうたった商品や時短ビジネスが、現代の私たちの時間を創出してきたことを見るコーナーや
そうして生まれた「暇」の時間を私たちはどのように過ごしているかを見つめ直す部屋も。
そのあと、会場は円形の5つの部屋に分かれます。
世界中のそれぞれの土地の上に、それぞれの時間があることを感じるブースでは
ティティカカ湖の浮島の一日、カラハリ砂漠のサン族の一日、トルコの断食月の一日、ルーマニアの羊飼いの一日、カトマンドゥの市場の一日を、国立民族学博物館の映像や映像にまつわるモノなどで体感することができます。
最後に、「時の大河」と題された円形構造物では
この一年間、世界中でどんな自然の営みと人間の営みが繰り返されているのか、
ぐるりと一周しながら見ることができます。
あなたが生まれた日は、どんな世界だったのでしょう。ぜひ、会場で確かめてください。
そして、私たちがこれから過ごしていく時間に想いを馳せる場所や、
形やことばに現れる「時」を集めた「時の採集箱」も3階で展示しています。
ぜひ見逃さずに、最後までお楽しみください。
会場写真:永禮賢