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レポート | 「アメリカン・トイズ」展レポート | 世田谷文化生活情報センター 生活工房

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「アメリカン・トイズ」展レポート

玩具を通して見る、激動の20世紀

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玩具とはなんだろう

同時代に作られた日本の玩具にも当時の社会状況が色濃く映し出されています。1931(昭和6)年に起こった満州事変以降、日本は軍国主義の色合いを強め、1937(昭和12)年の日中戦争勃発、1938(昭和13)年の国家総動員法を経て、国民の生活は戦時体制へと突入していきました。

子どもたちの学校教育をはじめ、紙芝居や絵本、雑誌や映画なども、戦意高揚のプロパガンダとして利用されました。玩具にも兵士や戦車などのモチーフが増え、検閲に合格した物だけが販売を許されました。

また、金属資源を軍需生産に充てるため、金属製玩具の製造が禁止となり、遊びのための玩具は「不要不急」の物として取り扱われ、生産が縮小していきました。

敗戦後は一転、GHQの改革により軍国主義的な表現は一掃されます。産業も少しずつ復興し、進駐軍の土産物として人気のあったジープのブリキ玩具をはじめ、特に陶磁器や玩具が量産されて、日本からアメリカへと輸出されるようになりました。1947(昭和22)年から1952(昭和27)年までに製造された全輸出品には、「MADE IN OCCUPIED JAPAN」(占領下日本製)の表示があります。

下の写真にあるセルロイドの兵隊は1940年代後半のオキュパイド・ジャパン製で、アルプス商事という会社から販売されたセルロイドのゼンマイ玩具です。ゼンマイを巻くと顔を左右に揺らし体を交互に傾けながら前進します。銃の先端が欠損していますが、完動品はゴム紐が連結部分についていて、紐を引くと銃口が折りたためるようになっています。

セルロイドの兵隊(占領下日本製) 1947~52年頃

フィッシャー・プライス トイズが一貫してプルトイをつくり続けた背景には、児童心理学における「イマジナリーフレンド(空想上の友達)」の要素があります。最初期の「Snoopy Sniffer」がすでにそうであるように、愛するペット感覚で遊べる点に大きな特徴と魅力があり、たとえそれが人工的な作り物の玩具であっても動物を愛する幼心の感性を養い、優しさと愛着心などを育てることが根底にあるようです。

玩具の存在は古代にまで遡ることができ、人間と同じぐらい歴史があります。オランダの歴史家ヨハン・ホイジンガは、「遊戯は文化よりも古い」と説き、フランスの社会学者・哲学者のロジェ・カイヨワは、「遊びの目的は遊びそのものである」と定義しました。

「遊び」がもたらす「人」や「事」や「場」との関わりは、人間が成長・成熟するために欠かせないものであり、玩具の存在そのものや、それと戯れる時間の中に、人間が人間たる所以があるのではないでしょうか。

玩具の動く様子

カワルン
子どもにとって遊ぶことは大事なことだよね
クラシー
きっと大人にとっても大事だとおもうよ~

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展示写真: 鈴木渉
クラシー&カワルン イラストレーション: にしぼりみほこ