三軒茶屋の三角地帯。それは戦後の闇市をルーツにもつディープなスポットとして知られています。生活工房の『アニュアルレポート』では過去3年間、三角地帯をひもとく企画を行ってきました。そして、2026年の1月から3月にかけて、取り組みの集大成として展覧会「三軒茶屋・大三角地帯展」を開催。このエリアを中心とした「三軒茶屋の記憶と記録」を募る現在進行形のプロジェクトとして更新を重ねていきました。このレポートでは、そんな展覧会の一環として行われた数々のイベントの模様をお届けしてまいります。
はじめに紹介するのは1月25日、酒場ライターのパリッコさんと酒場案内人の塩見なゆさんを講師に招いたトーク。あらゆる街の酒場で飲み歩いてきたお二人に、三角地帯や横丁文化の魅力について、そして酒と酒場の楽しみ方を語っていただきました。
- 会期:
- 2026年1月20日(火)~3月22日(日)
- 時間:
- 9:00~21:00 月曜休み(祝日は除く)
- 会場:
- 生活工房ギャラリー(3F)
- 開催日:
- 2026年1月25日(日)
- 時間:
- 17:00-19:00
- 会場:
- ワークショップルームB(キャロットタワー4F)
- 講師:
- パリッコ(酒場ライター)、塩見なゆ(酒場案内人)
People

酒場ライター。1978年、東京生まれ。酒好きが高じ、2000年代より酒と酒場に関する記事の執筆を始める。雑誌でのコラムや漫画連載、Webサイトへの寄稿も多数。著書に、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『つつまし酒』(光文社)、『缶チューハイとベビーカー』(太田出版)など。

酒場案内人。東京・杉並生まれ。新宿ゴールデン街に通った作家の両親を持つ。幼いころより中央線沿線の飲み屋に連れ回され、物書きの大人と瓶ビールに囲まれて成長する。趣味の飲み屋巡りを本業とし、飲料専門のライターとなる。酒場に恋して、年間二千軒をはしご酒。
三角地帯には、
ちいさな酒場が
たくさんあるよね
暗くなると、
雰囲気が変わるね
01
今なお更新される
「横丁」のルーツは
戦後から
パリッコさんと塩見さんは、トークイベントに向けた「予習」として、酒好きの友人・コダマさんを交えて三軒茶屋で飲み歩く日を事前に設けたそうです。トークはその日に巡ったお店のエピソードから始まりました。
1軒目は、三角地帯の外側から。茶沢通りを北方向へ5分ほど歩いて、太子堂中央街にある「ebian(エビアン)」へ。立ち飲みカウンターで揚げたての惣菜を楽しめるお店です。看板には、50年以上続いた揚げもの専門の惣菜店「天政」の文字が今も残っています。天政の店主がお店を手放す際に、海老原さんという方がその志を継ぎ、今の形になったそう。
ここでは名物「塩こんぶサワー」を堪能した二人。「なゆさん、一番変わったドリンクを頼むんですよね。さすが酒場案内人だなと思いました」とパリッコさんは笑います。
若い熱意のある方で、かつてのお店の雰囲気を残してくれて。コロッケが100円くらいの街のお惣菜屋さんのような値段だから、大人が飲んでる横で、小学生がおやつを買いに来るような、すごくいい雰囲気があって。ここを知ってから、三軒茶屋がさらに大好きになっちゃいました。
ここで、塩見さんが「三角地帯の話をする際に、しっかりと触れておかないといけない」と、事業継承の話に。
今、飲食店さんの後継ぎが本当に少ないですよね。光熱費の高騰や再開発の話もあってどんどん閉店が進むなかで、その道に詳しい方や熱意のある常連さんなどが店を継いで、街を守っていく流れが進んでいて。三角地帯もその傾向があるように思っています。
たとえば歴史ある居酒屋の店主がご高齢になっても、お子さんが家業として継ぐというのはそう簡単なことではない。だからこそ場所を残してくれるのは、すごくありがたいですよね。
塩見さんは新宿ゴールデン街に通う両親のもと、瓶ビールに憧れて育ったそう。現在はWebサイトやYouTubeなどを通じて居酒屋の魅力を発信していますが、そこでは飲み屋街の歴史も多く語られています。三角地帯のルーツについても、興味深い背景を教えてくれました。
三角地帯のベースにあるのは、終戦直後の「闇市」です。新宿の思い出横丁や梅田、池袋、赤羽……日本中の名だたる「横丁」の多くは、そうした闇市が原点です。物資が不足していた時代、国鉄などを利用して野菜や米、酒を運び、駅前の空き地で売ったのが始まりです。なぜ駅前に土地があったかというと、軍事輸送を担う国鉄の設備を空襲の火災から守るため、周囲を更地にする「建物疎開」が行われていたからなんですね。
本来、三軒茶屋のような私鉄沿線に闇市が生まれるのは珍しいケースだといいます。
三軒茶屋は世田谷線と玉川線が交差するところで、周辺はちょっと前までは田園地帯で畑が多かったから、集まる場所が必要とされていたわけですね。それが形を変え、小さな商店や飲食店がひしめく姿に繋がっています。
ゴールデン街とかもそうですけど、街の雰囲気が好きだという人たちがここでお店をやりたいと集まってくるんですよね。
活気がありますよね。一軒一軒の店舗が小さく、その分家賃が抑えられるから、チャレンジングなことができるんだと思います。
- クラシー
- 歴史をずーっと見てきたんだね
- カワルン
- いろんな世代の人から
愛されているね

