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レポート | 展覧会「東京スーダラ2019-希望のうたと舞いをつくる」 | 世田谷文化生活情報センター 生活工房

Report

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東京スーダラ2019

ー希望のうたと舞いをつくるー

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リサーチャーたちと試みた11のワーク

「探る」
自分の関心について調べ、それをリサーチャー同士で話す
「話し合う」
自分の関心についてテキストを書く
「人に会いに行く」
そのテキストをもって東京に住む知人たちと話し合う
「つくる」
他者を交えて身体表現をつくり、一緒に時事年表をつくる
「分かち合っていく」
一緒に食事をしたり、食事の場で話し合う

などのタームを経て、関わってくる人のレイヤーがどんどん増えていきました。リサーチャーだけから、東京の知人たちも含めて深い話をしていく設定になり、その後「つくる」というターンでもっと協働になっていき、さらにワークショップ参加者を募って場をシェアすることで、もう少し遠い人とも話し合えるようになっていきました。そのようにして、東京で一緒に暮らす人、関わり、想像力が伸びていく先に、自分たちに必要なスーダラに代わる言葉を「発明」する流れのワークになりました。このプロセスを構造化、抽出していくと11のステップを踏んできた形になります。

ワークの歩み&11のワーク
  1. 自分の略歴と関心事について話す
  2. 自分の関心事に関わる問題やキーワードをマッピングする
  3. 自分の関心事をテーマに、1対1で会話をする
  4. 自分の関心事をテーマに、文章を書く
  5. 自分以外の人が書いた文章を、自分が選んだ相手と一緒に読み、会話をする
  6. 自分の関心事について、初対面の人を交えた10人以上で議論する
  7. “震災後、オリンピック前(2011年3月11日‐2020年7月23日)”の年表を1日ずつ埋める
  8. 3人組になり、“震災後、オリンピック前”の期間にあった「転機になった日」のエピソードをひとりに伝える。聞いた人は、もうひとりから受けた振り付けを用い、そのエピソードを語り直す
  9. 自分の関心事を初対面の人たちに話し、一緒に身体表現をつくる
  10. 自分の関心事を初対面の人たちに話し、あなたたち向けの料理を作ってもらい、一緒に食べる
  11. 1961年に大ヒットした『スーダラ節』の「スーダラ」に代わるような、いまのわたしたちに必要なことばを考える
1.
自分の略歴と関心事について話す

ワーク実施日:2019年6月2日、7月14日
参加者:リサーチャー、砂連尾ゼミ生

(レポート)
選考によって選ばれた都内在住の4人のリサーチャーが集まり、それぞれ自己紹介をする。4人は年齢も経歴も職業も異なり、おたがいに普段の生活ではなかなか会わないタイプだと認識し、この出会いの価値自体を話し合った。また、現時点での関心事について話を聞き合った。じっくり会話していくと、まったく異なる関心領域だと思っていたものが、重複する問題点や感覚を含むことが明らかになる。その重なりに、現在の東京に住まうリアリティがすこし見えるような気がした。

2.
自分の関心事にかかわる問題や
キーワードをマッピングする

2019年8月3日
参加者:リサーチャー

(レポート)
これまでの会話を経て、リサーチャーたちと相談のうえ、今後それぞれが担当して向き合っていく〈関心事〉を決定。その関心事に関係する問題やキーワード、気になる資料やリンクなどを、「自分自身から近い/遠い」「過去のこと/未来に起こりうること」という座標軸上にマッピングしてきてもらった。
当日はそれぞれが作成してきたシートを使いながら、それぞれ自分の関心事がどのように面白いか、多様な問題をはらんでいるかなどを話したのち、みなで雑談。そして、この日の一連の会話を通して、自分の関心事に深く関わると思えるキーワードをひとつずつあげた。中には、他の関心事についての会話で出たことばから拾われるものもあり、各人があるひとつの主題を引き受けることで、一見雑多な会話からも多くの思考が得られるようになることを実感した。

3.
自分の関心事をテーマに、1対1で会話をする

2019年8月4日
参加者:リサーチャー(安富、太田、小林)

(レポート)
自分の〈関心事〉について、他のリサーチャーに対して1対1の会話形式でインタビューをする。瀬尾が会話の導入用の短いテキストをつくり、インタビュアーがそれを最初に読み上げて会話を始めた。会話に参加していない人たちは、その場を妨げない程度の距離に座り、メモを取りながら話を聞いた。これまで積み上げてきた関係性もあり、たがいの背景や性質を踏まえながら、それでもそのほとんどがはじめて聞く話であることを楽しみつつ、あちこちに飛んでいく軽やかな会話が進んだ。各インタビューは自然と約15分程度で一区切りとなった。その後、全体でそれぞれの会話を振り返り、もう一度各々の関心事にとって大事だと思うキーワードをあげた。個人的な感覚や体験などが語られた際に深い共感が生まれることがあり、そこから拾われたキーワードもあった。

安富:震災  キーワード:役割/業
太田:家   キーワード:秘密/コンプレックス
小林:友だち キーワード:共同体/恥ずかしさ
吉立:老い  (欠席のためなし)

4.
自分の関心事をテーマに、文章を書く

ワーク実施日:2019年9月〜11月
参加者:リサーチャー(安富、太田、小林)

(レポート)
自分の関心事について、前回・前々回のワークで得たキーワードを用いながら、800字程度の文章にまとめてもらった。9月1日に集まった際には、その文章をたがいに読み合い、意見交換。それぞれに異なる形式や手触りがあるが、双方の影響関係も感じ取れる不思議なつながりを持つ文章群となった。

5.
自分以外の人が書いた文章を、
自分が選んだ相手と一緒に読み、会話をする

ワーク実施日:2019年8月〜9月
参加者:リサーチャー(安富、太田、小林)

(レポート)
自分以外のリサーチャーが書いた文章を預かり、その文章を一緒に読みたい相手を考える。さらに文章を読んで会話をしている様子が小森によって撮影される。通称『読書会』と呼ばれることになったこのワーク。無理難題を突きつけたかと思いきや、リサーチャーたちは思いの外すんなりと相手を選び、撮影可能で会話もできる場所をそれぞれに見つけてくれた(都内で撮影可能な場所は、誰かの家か公共施設くらいしかないとも気づく)。
文章を読む相手の大半は、リサーチャーたちが日常的に関わり、信頼関係を結んでいる友人たちであったが、文章を介すことで、日常とは違う深度で会話をしているようだった。また、リサーチャー自身は、持参した文章の書かれた背景や作者の人となりをよく知っているため、会話の内容が偏った方向に進みそうになるとフォローを入れたり、企画の意図を汲んで軌道修正をしたりと、自然とファシリテーター的な立場に。反対に、書き手の前ではなかなか語れない自分の意見や感想を話し、会話の相手と共感し合うこともあった。

6.
自分の関心事について、
初対面の人を交えた10人以上で議論する

ワーク実施日:2020年1月18日
参加者:リサーチャー、砂連尾ゼミ生、一般参加者

(レポート)
一連のワークを通して関心を持つ人が多いと感じていた「老い」をテーマに、ラウンドテーブルを行った。自分の〈関心事〉として「老い」を担当しているリサーチャーの吉立さんが進行役を務め、太田さん、安富さんが板書でサポート。学生や一般参加者を含む20名ほどが参加した。
吉立さんのアイディアで、1回目は「自分と世代の違う人」、2回目は「自分が日常生活で出会わなそうな人」とそれぞれ組んで老いについて話し合い、キーワードをふせんに記入した。その後、ふせんをマッピングし、全体で意見交換をした。60分という時間は短かったが、たがいのことばに耳を傾け、“聞き合う場”になっていた。

7.
“震災後、オリンピック前(2011年3月11日
- 2020年7月23日)”の年表を1日ずつ埋める

ワーク実施日:2019年10月〜
参加者:リサーチャー、砂連尾ゼミ生、リサーチャーの友人ら、企画チーム

(レポート)
これまでじっくりと会話と思考を重ね、“震災後、オリンピック前”の現在を生きるわたしたちの思考を丁寧に表出しようと試みてきたが、一方で、どのような経緯で“現在”があるのかを大まかに確かめ、(捏造も含みながら)視覚化してみたいと話し合った。
東日本大震災発災の2011年3月11日から今日まで、インターネットや資料を駆使して毎日の出来事を調べ、空欄を埋めていく。最初は個人にとって大切な日や、関心事に関わるテーマなどに関連させながら調べていたが、あまりに膨大なため、のちにざっくりと分担制にした。みんなで集って年表を埋めていると、これまで機会がなくて話せなかった問題意識について語り合えたり、当時気に留めていなかった出来事に出会い直せたりする。
最後に、この年表を使って何か面白いことができないかとブレスト。「すごろくにする」「ランダムな接続詞でつなげてみる」遊びのような、ゲームのようなアイディアがいくつか出た。

8.
3人組になり、“震災後、オリンピック前”の
期間にあった「転機になった日」のエピソードを
ひとりに伝える
聞いた人は、もうひとりから受けた振り付けを用い、
そのエピソードを語り直す

ワーク実施日:2019年12月22日
参加者:リサーチャー、砂連尾ゼミ生、一般参加者

(レポート)
初対面の人も多かったため、たがいのことを知ることができるワークをしようと考えた。参加者は、“震災後、オリンピック前”のあいだで、自分にとって転機になった日を選び、壁面に貼られた年表(7.で制作したもの)にふせんを貼る。そして、その日付が近かった人同士で三人組になり、ワークを行った。
振り付けは、“むちゃぶり”にすることを条件とし、相手のポテンシャルに期待しながら、表現する人、語った人、振り付けた人、見る人が楽しめるであろうラインを狙う。聞いたエピソードに合うもの、相手に似合いそうなものなどの考慮もありながら、「ミジンコになる」「風になる」など、さまざまに振り付ける。
砂連尾の提案で、ゼミ生たちが踊る『東京キーワードダンス(7.の年表から「東京」ということばが入っている項目を抜き出し、簡単な振り付けをしてつなげたダンス)』の円の中に飛び込んでいくようにして、各人が、相手から聞いた大切なエピソードを次々と身体で表現していった。語られたエピソードの内容は、見る人にはほとんどわからない。けれど、そのエピソードの質感や、それを扱おうとする人たちの丁寧さは身体のあり様から伝わってくる。

9.
自分の関心事を初対面の人たちに話し、
一緒に身体表現をつくる

ワーク実施日:2019年11月17日、12月22日、2020年1月18日、19日
参加者:リサーチャー、砂連尾ゼミ生、一般参加者

(レポート)
これまで書きことばと話しことばによって思考を深めてきたが、「スーダラ節」が持つ軽やかさに至るにはいったい何が必要だろうか。ヒントはきっと“身体”にある。そこで、『読書会』の撮影現場で、友人たちを相手にファシリテーター役を担っていた彼らをイメージしつつ、今度は初対面の人たちを交えて話し合いをしながら、身体を使った表現づくりができないかと考えた。
参加者たちは、これまでリサーチャーたちがそれぞれ担当してきた「震災」「家」「友だち」「老い」の4つの〈関心事〉の中で、自分がいま気になるものを選ぶ。
各チームに別れた後、リサーチャーは、それぞれに考えた手法でこれまでの思考の経緯を伝えたり、参加者から出るキーワードを拾ったりしながら話し合いを進めていき、ダンスを学ぶ砂連尾ゼミ生たちは、そこから身体表現に起こしていくことをサポートする。そして、およそ40分から1時間程度のクリエーションを経て、チームごとに発表を行った。
ことばを中心に積み重ねてきた思考が、他者との協働を経て身体表現となる。すると、表現する人たちは身体的な実感を持ってさらに思考を深めたり、思わぬ納得感を得たりし、また、それを見る人たちは想像力をポンと遠くへ飛ばすことができる。荒削りな跳躍をみなで確かめ、楽しみ合う時間となった。

10.
自分の関心事を初対面の人たちに話し、
あなたたち向けの料理を作ってもらい、一緒に食べる

ワーク実施日:2020年1月19日
参加者:リサーチャー、砂連尾ゼミ生、一般参加者、料理お助け隊

(レポート)
他者とともに身体表現を行うことは、ハレの場を設定し、互いに見合うことでもある。その場で出来た関係性や深度のある会話を日常の中に持ち込むイメージを持つために、食事をともにするのはどうだろうか。そこで、1月19日の身体ワークに、料理が得意、好きな人たち数名に来てもらうことにした。
リサーチャーたちは一連のワークショップの経緯、それぞれが向き合ってきた関心事などを“料理お助け隊”に共有し、参加者みんなで食べられるご飯をつくってほしいと依頼した。
お助け隊の人たちはその場でメニューを考え、買い出しに行き、身体ワークをしている部屋の隣のキッチンで料理をしてくれた。ドアの隙間から溢れてくる匂いが生活との結びつきを想起させてくれるし、お腹も空いてちょっと未来へと思考が飛ぶ。その日のメニューはカレーとココナッツ煮、コンソメスープ。リサーチャーも砂連尾ゼミ生も一般参加者も料理お助け隊もスタッフもみな混ざって話しながら食事をした。

11.
1961年に大ヒットした『スーダラ節』の
「スーダラ」に代わるような、
いまのわたしたちに必要なことばを考える

ワーク実施日:2020年1月19日
参加者:リサーチャー

(レポート)
戦後15年の大ヒット曲『スーダラ節』。辛い体験の後、猛烈に変わっていく社会状況の中で、“いいかげん”を引き受けた植木等。“震災後、オリンピック前”の現在において、“わたしたち“が必要としていることばや態度はいったい何だろう。
リサーチャーたちは応募時点の関心や、これまでの経緯を思いかえすところから話し合いを始めた。問いにある“わたしたち”に、“何かに参加しなくてもそこにいる人たち”を含み込めたいという考えから、“いる”こと自体をどのように肯定するかと話し合ったという。いくつかの候補をあげた上で、「いるね」という言葉を選んだ。

クラシー
スーダラ年表を1日1日たどっていくとあの日あの時、何してたかなぁと思い出すねぇ。
カワルン
自分の誕生日の日のニュースとかつい見ちゃうね。この10年の間にもいろんなことがあったんだねぇ。