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レポート | 渦巻く智恵 未来の民具 しめかざり | 世田谷文化生活情報センター 生活工房

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渦巻く智恵 未来の民具 しめかざり

森須磨子さんと巡る、「しめかざり」ギャラリーツアー

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「渦巻く智恵未来の民具しめかざり」展

「渦巻く智恵
未来の民具
しめかざり」展

期せずして時代の大きな転換点となった2020年。後世に記憶を残すこの年のしめくくりとなった生活工房の企画展「渦巻く智恵 未来の民具 しめかざり」を、企画制作者の森須磨子さんのガイドで巡ります。

SUMAKO MORI森 須磨子

1970年、香川県生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科修了。同大学助手を経て、2003年に独立。グラフィックデザインの仕事を続けながら、全国各地へしめかざり探訪を続けている。しめかざり関連の執筆、講座、展覧会企画、監修、メディア出演など活動多数。著書に、たくさんのふしぎ傑作集『しめかざり』(福音館書店)、『しめかざり–新年の願いを結ぶかたち』(工作舎)など。

森 須磨子
クラシー
今回は2020年のしめくくりになった「しめかざり」展かあ。楽しみだな~
カワルン
最後には、ぼくらの友人が登場するスペシャル対談もあるよ!

第1室

しめかざり時空探訪

本日はしめかざり展へ、ようこそ。

これから皆さんをギャラリーツアーという形で、「しめかざり」を巡る小旅行へお連れします。お正月の風物詩とも言えるしめかざりを通じて、日本各地の風土やそこで暮らす人々の営み、智恵などに思いを馳せていただけたら幸いです。

しめかざり時空探訪

展覧会の導入となる、この部屋では、どのような展示を意図されていますか?

最初にご案内する3Fのこの空間では、「しめかざり時空探訪」というテーマで展示を行っています。

ここでは、日本各地で異なるしめかざりの多様性、構造、歴史など、時間と空間のアングルから掘り下げて紹介しています。

「しめかざり」と「しめなわ」の関係について、簡単に教えていただけますか?

しめなわは「標縄」とも表記され、その場の「占有」や「結界」の意味を含んでいました。つまり、その縄を張ることで空間を二つの世界に分けるとともに、邪気を祓い、縄の内部を清める力があるとされました。お正月に「自分が大切にしている場所」に、しめなわを張るような風習が生まれたのも、そのような背景があります。
お正月のしめなわは、近世頃になると様々に造形されるようになりました。江戸時代の俳諧の書では、「飾藁」「飾縄」と表現されています。つまり、しめかざりもしめなわもその性質は同じですが、お正月に使われるものは、新年の福を授けてくれるというトシガミ様を招く標(しるし)とも言えるでしょう。その形態は地域によって様々で多様性に富んでいます。

玄関用しめかざりの形態分布地図

この「玄関用しめかざりの形態分布地図」って、実にユニークな分類ですね。

この20年程私が日本各地を巡りながらリサーチしたしめかざりの形態を、それぞれの特徴ごとに分類しています。九州や山陰地方には「鶴エリア」が広く存在しています。石川県あたりには僅かですが「亀エリア」が存在します。青森・秋田・山形県周辺には「両じめエリア」。鳥取・岡山県周辺では「メガネ」ラインも存在します。しかし、実際にはその土地に伝わる形を受け継ぎながらも、作り手によって少しずつ「かたち」が異なります。改めて、人の数だけしめかざりが存在していることに気づかされました。

図)玄関用しめかざりの形態分布地図

こちらの展示では、しめかざりの写真を地方ごとに並べてみました。日本各地の慌ただしい年の瀬の様子や温かな家族の日常を垣間見ることができるかと思います。年末に地方を巡ると、寒空のもと作り手一家がしめかざりを露店販売する風景に出会えたりします。その一方、地方でも高齢化が加速したことで、しめかざりの技術を受け継ぐ作り手が大幅に減少していることも事実です。

写真)手製のしめかざり探訪地図

素のすがた

装飾を外して観察してみると、しめかざりの個性や印象も随分違って見えますね。

一見すると、しめかざりはどれも似たような形状に見えますが、実はその表情は千差万別です。かざりを外して「素のすがた」を観察することで、新たな発見があります。またその独特の形状から、作り手の「想い」や「願い」といったメッセージを読み取ることで、しめかざりへの興味は一層深まるかと思います。
こちらの展示では藁の「素のすがた」(写真1)を紹介しています。ちなみに、これは石川県金沢市で作られている亀のしめかざり(写真2)です。この装飾を外すと、なんと「親亀・子亀・孫亀」が現れます。世代が続いて繁栄していくことを願って作られたこのしめかざりは、何とも愛らしく、家族の「絆」のようなものも伝わってきます。

写真1)素のすがた
写真2)石川県金沢市で作られている亀のしめかざり
写真3)亀の装飾を外した素のすがた

一本の縄からしめかざりへ

一本の縄がしめかざりに変化する過程を「歴史」と「造形」を並べることで表したのがこちらの展示です。各時代において、縄は日々の暮らしの中でとても身近な存在であり、生活には欠かせない特別な道具でもありました。

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きもちがかたちになる

しめかざりの「多様化の要因」を探った、こちらの展示も興味深いですね。

ここでは、「きもち」が「かたち」に変化していくプロセスを紹介しています。しめかざりは、気候や風土、地域性、社会的な要因、作り手の想いなど、様々な要素が重なり多様化していきました。

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カワルン
「しめなわ」と「しめかざり」って本質は同じところにあるんだね。
クラシー
たくさんの「きもち」が、たくさんの「かたち」になったんだね。