第2室
月下のしめかざり

トシガミ様が大晦日の夜にやってくるということで、ここからの展示は月あかりに照らされたほの暗い夜のイメージにしています。
漆黒の背景にしめかざりの存在感が浮き立つ趣のある空間ですね。
ここでは、全国各地のしめかざりを、種類別に分類して展示しています。

たわらの系譜
はじめに紹介するのは、「たわらの系譜」です。山形県鶴岡市に伝わる俵ジメや小正月の飾り物が並んでいます。鶴岡市のある庄内平野は日本有数の穀倉地帯ということもあり、この地域ではお米の豊作を願った「俵」の形のしめかざりになっています。

カケノイオ(懸の魚)
こちらの一角は、香川県観音寺市の伊吹島に伝わる「カケノイオ(懸の魚)」と呼ばれるものです。主に、座敷の柱などに取り付けられるものです。

ケンダイ
写真上は仙台の伝統的な門松の中央に取り付けたとされるケンダイです(再現)。江戸時代には、仙台城の門42箇所に飾ったと言われています。写真左下は会津若松に伝わるケンダイです。日常生活とつながっていることを伝えたくて、背中に羽織る蓑(みの)、牛や馬用のわらじも紹介しています。

フシ
これらは、藁の節(ふし)を揃えたしめかざりです。少しわかりにくいかもしれませんが、藁束の中央や端で節を揃えることで茶色のラインを生み出しています。

年男
こちらは、30代から50代までの「年男」が作るしめかざりを展示したコーナーです。ここで言う年男とは、その家の正月準備をすべて取り仕切る人のこと。その多くは「家長」が務めました。

シメノコ
次にシメノコ(縄から垂れた藁の部分)の数に注目したコーナーです。写真左上に見えるのは埼玉県児玉郡で作られたもので、神様の顔が直接見えないようにという意味で「お顔隠し」と呼ばれています。シメノコが6束+6束で計12束になっていて、1年を表しています。

「玉じめ」と「ちょろけん」
これは、京都に伝わる「玉じめ」と「ちょろけん」と呼ばれるものです。玉じめは2束のシメノコを開脚させることもあります。

生き物
こちらは主に「生き物」を象ったしめかざりを展示したコーナーです。これは、宮崎県高千穂の「鶴」のしめかざり(写真1)ですね。こちらは、島根県雲南市のもの(写真2)で鶴と亀が亀池を覗き込むかたちをしています。こちらは三重県伊賀市のエビス馬(写真3)と呼ばれるもの。馬は神様の乗り物とされています。



イノチのカタチ
こちらのコーナーでは、「宝珠」のしめかざりを中心に展示しています。ちなみに宝珠は「意の如く願いが叶う珠(たま)」とされています。

輪飾り
これは、「輪飾り」と言われて、私たちの日常の暮らしでよく使う道具や大切な場所に掛けて使うものが中心になります。

日本全国にこんなにも多くのしめかざりが形を変えて存在しているなんて、改めて驚きます。
今回ご紹介できたものは100点余りですが、これはしめかざりのほんの一部にすぎません。今は作り手が激減している状況ですが、それでも先人たちの智恵や技を受け継ぎながら、試行錯誤を重ね、その土地のしめかざり文化を継承されている方々が現在でもいらっしゃいます。いくつかの事例を含め、次の展示エリアで紹介できたらと思います。
- クラシー
- 「宝珠」のしめかざり、すてきだね。ぼくの部屋にほしいな~
- カワルン
- こんなに暗いワークショップルームはなかなか見られないよ。幻想的で落ち着く空間だね。
