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不安とのつきあいかた
手紙を書いたことがなかった子が「休憩できるからいい」って言ったっていうのは、つまり休憩がなかったってことですかね?
ああ、そうですね。忙しないってみんな感じているのかもしれないですね。
さっきキーワードとしてスピードって言ってたけど、この絵本の中でも、イロさんが「会いたいです」って手紙出してから、返事が来ないシーンがあるじゃないですか。
そうですね。
それで返事がないのをめっちゃ不安に思うじゃないですか、黒いページで。でも『きいろいカラス』の世界で手紙だけがコミュニケーション手段だとしたら、出した手紙が返ってこないことに対して、不安になったりするのかな、と思ったんですよね。
なるほどね。
返事がないことを不安に思うスピード感って、昔はどのぐらいで今はどのぐらいに変わったんだろうかとちょっと思ったんです。
確かに。イロさんの心情は割と今の人に照らし合わせてるんですけど、でもどうなんだろう。みんなメールってどのくらい返信ないと不安になるんですかね。
それはね、本当に僕分かんなくて。自分がいっぱいいっぱいだとメールでも平気で3週間とか1ヵ月とか返事できなかったりするんですけど、そのくせ、自分が送ったメールに1週間も返事がないと、なんだよって気持ちになるんです。
笑)そうだったんですね
スピードが増してるっていうことも、忙しなくなってるということもあるんですけど、「今」が狭まっている感じがすごくあるんです。
「そのうち」っていう言葉が指すものも全然違うんでしょうね。昔の人の「そのうち」が1ヵ月くらいとして、私たちの「そのうち」って3日ぐらいかもしれない、ってことですよね。
下手したら半日くらいかも。「今」っていうタイミングについて、もうちょっと広く捉えていたんだけど、特にコロナ禍になってから世界の同時性がものすごく強まって、この国では今こういう対策がとられています、今ここではこうです、といった「今」の水平線が広がっていて、だから場所、空間的な結びつきはものすごく強まるんだけど、その分、民話が口承されていくような「時間」の軸が削られているような感じがあるんですよね。
はい、うんうん。
だからこの会場で展開されている「100年後に生きる人へ」っていう手紙を書こうと思った時に大変だったんですよ。「100年後」ってどうやって考えるんだっけ、って。僕「今のことで精一杯です」って書いたんですけど、そういう「今が苦しいです」って書いてる方ちらほらいましたね。「今が楽しいです」って人もいたけど、今が苦しいと今が楽しいっていうのは、なんか近い。
今に注目してるってことですもんね。
そう。なんか感じ方なのかなと思って。だから100年後に生きる人へって書いてもらうってすごいいい、いいなあって思うんです。
ありがとうございます。
- カワルン
- 「今」はいつまでつづくんだろ?
- クラシー
- ふと気が付くと雨がやんでたりするんだよねえ