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レポート | 「きいろいカラス」展アーティストトーク 椎木彩子×村上慧「お家で話す」レポート | 世田谷文化生活情報センター 生活工房

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「きいろいカラス」展アーティストトーク 椎木彩子×村上慧「お家で話す」レポート

「今」の範囲、それぞれの時間

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不安とのつきあいかた

村上慧

手紙を書いたことがなかった子が「休憩できるからいい」って言ったっていうのは、つまり休憩がなかったってことですかね?

椎木彩子

ああ、そうですね。忙しないってみんな感じているのかもしれないですね。

村上慧

さっきキーワードとしてスピードって言ってたけど、この絵本の中でも、イロさんが「会いたいです」って手紙出してから、返事が来ないシーンがあるじゃないですか。

椎木彩子

そうですね。

村上慧

それで返事がないのをめっちゃ不安に思うじゃないですか、黒いページで。でも『きいろいカラス』の世界で手紙だけがコミュニケーション手段だとしたら、出した手紙が返ってこないことに対して、不安になったりするのかな、と思ったんですよね。

椎木彩子

なるほどね。

『きいろいカラス』原画
『きいろいカラス』原画
村上慧

返事がないことを不安に思うスピード感って、昔はどのぐらいで今はどのぐらいに変わったんだろうかとちょっと思ったんです。

椎木彩子

確かに。イロさんの心情は割と今の人に照らし合わせてるんですけど、でもどうなんだろう。みんなメールってどのくらい返信ないと不安になるんですかね。

村上慧

それはね、本当に僕分かんなくて。自分がいっぱいいっぱいだとメールでも平気で3週間とか1ヵ月とか返事できなかったりするんですけど、そのくせ、自分が送ったメールに1週間も返事がないと、なんだよって気持ちになるんです。

椎木彩子

笑)そうだったんですね

トーク風景
村上慧

スピードが増してるっていうことも、忙しなくなってるということもあるんですけど、「今」が狭まっている感じがすごくあるんです。

椎木彩子

「そのうち」っていう言葉が指すものも全然違うんでしょうね。昔の人の「そのうち」が1ヵ月くらいとして、私たちの「そのうち」って3日ぐらいかもしれない、ってことですよね。

村上慧

下手したら半日くらいかも。「今」っていうタイミングについて、もうちょっと広く捉えていたんだけど、特にコロナ禍になってから世界の同時性がものすごく強まって、この国では今こういう対策がとられています、今ここではこうです、といった「今」の水平線が広がっていて、だから場所、空間的な結びつきはものすごく強まるんだけど、その分、民話が口承されていくような「時間」の軸が削られているような感じがあるんですよね。

椎木彩子

はい、うんうん。

村上慧

だからこの会場で展開されている「100年後に生きる人へ」っていう手紙を書こうと思った時に大変だったんですよ。「100年後」ってどうやって考えるんだっけ、って。僕「今のことで精一杯です」って書いたんですけど、そういう「今が苦しいです」って書いてる方ちらほらいましたね。「今が楽しいです」って人もいたけど、今が苦しいと今が楽しいっていうのは、なんか近い。

椎木彩子

今に注目してるってことですもんね。

村上慧

そう。なんか感じ方なのかなと思って。だから100年後に生きる人へって書いてもらうってすごいいい、いいなあって思うんです。

椎木彩子

ありがとうございます。

「100年後に生きる人へ」の手紙
「100年後に生きる人へ」の手紙
カワルン
「今」はいつまでつづくんだろ?
クラシー
ふと気が付くと雨がやんでたりするんだよねえ