日本の伝統食—私たちは何を食べ継いできたか
都市だけでなく地方の暮らしぶりも変化し、失われていく風習や生活文化も少なくない現代にあって、日本伝統の食文化「和食」は、ユネスコの無形文化遺産として登録を目指す動きもあるなど、その精神文化とともに世界的な関心を集めています。
本展では、その日本食文化にスポットをあて、栽培者自らの手で種をとり栽培されてきた「在来作物」と、日本料理の礎にもなった「精進料理」を通して、食材の採集や栽培方法、調理や作法の中に、自然と折り合いをつけながら生きてきた日本人の心や知恵を探ります。展示では、二つの伝統が色濃く残る山形県庄内地方を事例に、自家採種や焼畑農法、出羽三山に伝わる精進料理とそれを育んだ羽黒修験道と山伏など、日本食とその背景にある自然と精神文化を紹介します。私たちは伝統の日本食を通して、どんな文化と心を食べ継いできたのでしょうか。そして次の世代に、何を残し継いでいくべきなのでしょうか。
これからの時代の、食のアトツギ
庄内地方には今、地域の在来作物や精進料理など伝統の食文化を独自の資源と考え、都市と地方の交流プロジェクトや地域経済の循環を興そうとしている後継者―アトツギ―たちがいます。作物も料理も、美味しく楽しく食べ継いでいかなければ、いつか途絶えてしまいます。展示では彼らの新たな取り組みも紹介し、これからの時代の地域と食文化の後継ぎの形を探ります。また会期中には、ドキュメンタリー『よみがえりのレシピ』の上映会や食のワークショップを開催し、都市生活者が地方から学び、恵みや知恵を自らの暮らしに取り入れていくという交流、食べ支えるという循環、都会に生きる私たちができる郷土の継ぎ方についても考えます。
〈展覧会構成〉
山の継ぎかた 山の恵みの採集・保存・精進料理のいろは、出羽三山の山伏が体現する山の思想や、その伝統を世界に発信する精進料理プロジェクトの活動を紹介。
種の継ぎかた 固有種の種とりと栽培、全国的に失われつつある焼畑農法の技術、そして在来野菜を地域資源としてよみがえらせた倅たちの活動を紹介。
故郷の継ぎかた 都市に暮らす私たちの食のアトツギとはなにか。地域の在来作物や、家庭の味など、暮らしの足元をみつめるアトツギの提案をします。
【主催】公益財団法人せたがや文化財団 生活工房
【協力】NPOフードデザイナーズネットワーク、㈱出羽庄内地域デザイン、出羽三山歴史博物館、いでは文化記念館
【後援】世田谷区、鶴岡市観光連盟、羽黒町観光協会、湯田川温泉観光協会、鶴岡食文化創造都市推進協議会