1952年、第2次世界大戦の敗戦後間もないドイツの国立科学映画研究所で、ある壮大なプロジェクトが始まりました。その名は「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」(以下、ECフィルム)。世界中の知の記録を集積することを目指した、“映像による百科事典”です。以降40年近くの歳月をかけ、あまたの研究者やカメラマンが世界各地に派遣され、その地に生きる人々の暮らしや儀礼、動植物の生命活動をフィルムに収めました。映像の総数は、実に3,000タイトル以上にも及びます。
2019年春、生活工房で開催した「映像のフィールドワーク展」の第二弾である本展は、ECフィルムの中から、績む 編む 組む 結ぶ 撚る 綯う 織る、という「ひもづくり」にまつわる映像約50作品(会期中入替あり)を展示上映し、身近にある植物や獣毛を素材に、衣服から住居まであらゆるものを生み出してきた人間のものづくりの原点を辿る展覧会です。
ECフィルムには、遠い昔の遠い国の人が紡いだ、美しい手仕事の時間が記録されています。本展では、そのタイムカプセルを21世紀に開き、映像を「みて」草や古布など生活の中から素材を採集して「やってみる」、そして自分の「手から考える」ことを実践するワークショップも行います。映像をフィールドワークすることの愉しさと「みる、やってみる」のアイデアを散りばめた展覧会へ、ぜひご来場ください。
<上映入替スケジュール>
第1期 7/25(火)-8/26(土)
第2期 8/27(日)-9/18(月祝)
第3期 9/19(火)-10/22(日)
※各最終日の18:00頃に、次のプログラムに入替を行います。
エンサイクロペディア・シネマトグラフィカとは?
「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」=ECフィルムは、世界中の人の暮らし、生き物の生態を記録して映像の百科事典を作るという壮大なプロジェクトです。
1952年、第二次世界大戦の敗戦後間もないドイツ・国立科学映画研究所ではじまりました。以来たくさんの研究者やカメラマンが世界各地に赴き、3,000タイトルを超える貴重な映像アーカイブを制作しました。
人びとの暮らしの習慣や衣食住、もの作り、音楽、儀礼などを記録した民族学映像、様々な生き物の行動や生態を観察した生物学映像、機械工学や技術史などを取り扱った技術科学映像の3つの主軸で構成されています。
研究、教育を目的に制作されたこれらのECフィルムは各国機関に渡り、日本では1970年より下中記念財団が管理・運用を行なっています。
EC活用プロジェクトについて
16mmフィルムで記録、保管されていたために、長い間上映が行われていなかったECフィルム。これを再び開いてみたい!と、有志によるプロジェクトがスタートしたのが2012年。映像のデジタル化やウェブサイトの検索リストの作成、貸し出しを行うだけではなく、アーカイブ映像の新たな活用方法を模索。タイムカプセルを開け、一緒に旅をするように映像を見るスタイルを「映像のフィールドワーク」と名付け、実験的な展示や上映会、ワークショップを続ける。「観る、やってみる、問い続ける」ことで、映像の現代的な価値を探究中。
メンバーは下中菜穂(造形作家、伝統切り紙研究 旧暦カフェ主宰)中植きさら(ポレポレ東中野)丹羽朋子(文化人類学)。
冊子「こな ねる たべる」 生活工房などで実施してきた展示や上映会、ワークショップの内容をまとめた冊子
(詳しくはhttp://ecfilm.net/news/ec_book01)
プレス関係の皆さまへ
こちらからプレスリリースがダウンロードできます
Shortly after losing the Second World War, a grand project was initiated in Germany by the former Institute for Scientific Film in 1952. Called the Encyclopaedia Cinematographica (hereinafter the “EC Films”), this project produced a film encyclopedia compiled for the purpose of collecting records of knowledge from around the world. Since its initiation, a large number of researchers and photographers were dispatched across the world for over 40 years to film local life, local rituals, and the daily activities of local animals and plants. Indeed, the total number of films collected by this project exceeds 3,000.
Out of the EC Films, about 50 films concerning string making––in other words spinning, knitting, braiding, tying, twisting, twining, and weaving––will be shown at this exhibition, Part 2 of the Film Fieldwork Exhibition held in the spring of 2019 at the Lifestyle Design Center (the films on display will change during the exhibition period). The exhibition focuses on the starting point of production by humans, who have generated almost everything, from clothing to houses,using locally growing plants and animal hair.
The EC films have recorded the time involved in creating beautiful handiwork crafted by people in a faraway land a long time ago. This exhibition will open those time capsules in this 21th century and offer workshops for thinking through hands-on activities by trying it yourself after watching the film using materials like those collected from everyday life including roadside plants and old fabric. Don’t miss this exhibition filled with ideas for watching and trying as well as the joy of doing a film-based fieldwork!
『ココヤシ繊維の紐づくり』エリス諸島 ニュータオ島/ポリネシア人/1960年/10分30秒/E0411
『ココヤシ繊維の網づくり』ギルバート諸島 ノヌーティ環礁/ミクロネシア人 /1963年/8分/E0826
『グリュックスタットの端綱づくり』中央ヨーロッパ ホルシュタイン/1969年/8分30秒/E2007
『筏舟づくり』ギルバート諸島 ノヌーティ環礁/ミクロネシア人/1963年/11分/E0832
全長約6メートルの葦舟を展示(所蔵:墨田区)
暮らしの中から採集したさまざまな素材を、会場いっぱいに展示します 写真:下中菜穂