日本の生活のなかで息づく「赤」。
古代より祝事や魔除けの意味を持ち、日本独自の伝統文化として美しさと豊かさを受け継いできました。
「赤」は、原材料によっても、紅、朱、丹、緋など名称が異なります。
「赤」の多彩な表現からも、古来より四季のうつろいを感じ、
自然の色合いを生活に取り入れてきた日本人の技と美意識が感じられます。
赤に込められた願いを、染織と衣服をはじめとする生活に関わる領域から見出します。
●眞田岳彦「赤の作品」展示
日本の繊維を作品の素材にしてきた私は、これまで、苧麻、木綿、羊毛、絹など伝統繊維に関わる土地を訪ねてきた。
今回は「日本の赤」を求めて、熊本、奈良、大阪、京都、三重、東京、埼玉、高崎、山形を歩いた。
日本人はかつて、大地から産出される鉱物の赤、植物から抽出される赤、昆虫から生まれる赤を使い、
絵を描き、壁を塗り、衣服を染め、祈りや願いを込めた。
赤は大地を包み、人を包み、願いを包む、人が今を生きるあかしである。――眞田岳彦
日本各地をめぐる旅から、気候によって形成された「赤」の植物の産地、地質によって産出された「赤」の鉱物、
そして河川が運んだ「赤」の文化と経済が見えてきます。
●「日本の赤」展示
草木染の糸、紅板締めの版木と染め布、紅花で染められた繭などの物品や、
赤にまつわる様々な領域からの寄稿を展示し、日本の赤をご紹介します。
赤についての随想 ――赤坂憲雄(民俗学者、学習院大学教授)
装飾古墳とベンガラ ――坂口圭太郎(熊本県立装飾古墳館)
山形の紅花 ――山形県河北町紅花資料館
武州桶川の赤 ――桶川市歴史民俗資料館
草木染の赤 ――山崎和樹(草木染研究家)
和紙と赤 ――小林一夫(お茶の水 おりがみ会館館長)
古典織物の赤 ――中島洋一(古典織物研究家)
化粧と紅 ――伊勢半本店紅ミュージアム
紅絹と紅板締め ――吉村晴子(たかさき紅の会)
紅花ルネサンスの取組み――辻けい(美術家、東北芸術工科大学教授)
●「赤の染料/顔料」展示
「紅花」は、花弁から染料や口紅のもとになる色素がとれることから、
江戸時代には、山形はじめ奥州、武州、上総等で栽培が盛んでした。
また、茜は日本の山野に自生していた植物で、染料として各地で使われ、
赤土などから作られるベンガラは、建築や生活用具だけではなく繊維や衣服にも使われました。
特別な色として赤を纏い、赤に願いを込め、赤をめぐることで日本人は生きてきました。
眞田岳彦(衣服造形家)
女子美術大学特任教授、東北芸術工科大学客員教授。
眞田塾主宰、七月七日会主宰。SANADA Studio代表。
衣服、繊維を通して地域、人づくりに取り組む。
ISSEI MIYAKE INC.にて衣服を学び92年渡英。
彫刻家RICHARD DEACONの助手を経て95年帰国し独立、SANADA Studio設立。
国立民族学博物館外来研究員等を経験し、国内外の美術館・ギャラリーで衣服・繊維作品発表、
染織地域プロジェクト 、企業のアート&デザインディレクションなどを行う。
著作『IFUKU 衣服』(六曜舎)、『考える衣服』(スタイルノート)他。