世界の海の暮らしをクラフトを通して紹介していく連続企画、“7つの海と手しごと”。
〈第6の海〉として、インド洋に浮かぶスンバ島に伝わるイカット(絣織物)、ヒンギとラウを取り上げます。
17,000あまりの大小の島々からなるインドネシア共和国。
その南部に位置するヌサ・トゥンガラ諸島に、日本の四国ほどの大きさのスンバ島はあります。
この島独特のイカットは、女性たちが昔ながらの腰機(こしばた)で織っています。
男性用の衣服「ヒンギ」は腰に巻き、肩に掛けます。女性用「ラウ」は筒状に仕立ててまといます。
描かれるモチーフには祖霊崇拝に基づいた世界観が表されており、さまざまな祈りも託します。
島の特産であるスンバ馬は男性の富の象徴、エビは子孫繁栄、
カニや魚は村人の一体感、両手を挙げた赤子は強い戦士の誕生など。
安住の地を求めて島伝いに海を渡ってきた祖先の伝説を表す船も描かれます。
文字のなかった時代に、一族の存続と繁栄を願う心を布に織り込め、後世に伝えてきたのです。
死者の埋葬の際には来世で着るためにと、男性にはヒンギ、女性にはラウを何枚も遺体にかけます。
ラジャ(首長)の場合は200枚を超え、弔問を迎え入れる準備が整うまで数年間も埋葬ができないといいます。
スンバ島の人びとにとって、ヒンギとラウは実用を超えた、民族の誇りそのものであるのです。
本展では、40年以上にわたってスンバ島をはじめとした
インドネシアの染織研究を続けてこられた渡辺万知子氏の貴重なコレクションから、
ヒンギとラウほか民芸品・映像など約30点を展示。
関連の講演やワークショップもあわせ、スンバ島の手しごとと生活文化を紹介します。
スンバ島・プライリュウの王族
ワニと人が一体化した模様の経紋織パフドゥの儀礼布
木綿地に貝とビーズで刺繍した王妃の腰衣ラウ・ウトゥ・コウ
シリーズをまとめた特集ページ「クラシー&カワルンと巡る、7つの海と手しごとに触れる旅」もぜひご覧ください。
*下記イベントの日のいずれも11:00〜17:00に、イベント会場受付にて渡辺万知子さんセレクションのインドネシアの布をはじめ衣服や小物の販売を行います。