「クレオール」という言葉をご存じでしょうか。
もともとは、アメリカ大陸や西インド諸島、アフリカの旧植民地で生まれた人々、
そこで混じり合った文化、言語のことを指します。
島国である日本もまた、遥か昔から多種多様なルーツを持つ人々が行き交い、
混ざり合ってきたことを考えると、この言葉とも無縁ではありません。
“うたう旅人”として活動する松田美緒さんは、このような日本の多様性/地域性を示すキーワードとして
「クレオール」という言葉を用い、CDブック『クレオール・ニッポン』を発表しました。
ハワイやブラジルへ渡った日本人、長崎県伊王島に暮らしたキリシタン、徳島県祖谷(いや)の木びきさん。
労働や祈りの中で歌われてきた暮らしの記憶の数々を、松田さんは自身の歌声を通して鮮やかに再生します。
画一的な日本のイメージとは異なる、歌が映し出す多様な風景は、まさに「クレオール」と言えるでしょう。
本展では、歴史を伝える映像やレコード、そして旅路の記録とともに、松田さんが出会った日本の歌をお聴きいただけます。
市井の人々が歌い継いできた音楽を通して、私たちの暮らしに耳を傾ける展覧会です。
左:ハワイでのひとコマ(松田さんの写真資料より)/右:レコード『浪曲 平野運平』
松田美緒(まつだ みお)
土地と人々に息づく音楽のルーツと魂を身体で吸収し表現する“うたう旅人”。
ポルトガル、ブラジル、ウルグアイ、アルゼンチン、カーボヴェルデなどポルトガル語圏、スペイン語圏の国々で、
ウーゴ・ファットルーソ、カルロス・アギーレをはじめ現地を代表する数々のミュージシャンと共演。
2014年、3年がかりのライブとフィールドワークの集大成として初のCDブック『クレオール・ニッポン うたの記憶を旅する』を発表。
2017年4月、地中海全域の歌を中心とした『エーラ』をリリース。