太古の昔から、人は自然と共生し、その恵みを受けて命をつないできました。本展は、画家・牧野伊三夫が、そうした人々の営みを見つめるなかから生まれた、作品と活動をご紹介するものです。
塩
牧野さんの新作絵本『塩男』(あかね書房)は、福岡県の糸島半島にある、海辺の製塩所を取材して描いた作品です。本展ではスケッチや原画などの関連資料とともに、全長10mを超える壁画によって、作品の世界を展示紹介します。
杉
岐阜県の高山市と、大分県の日田市で牧野さんが取り組む、林業にかかわる活動をご紹介します。
今から13年ほど前、アートディレクターの友人に連れられて高山市の老舗家具メーカー飛騨産業を訪れた牧野さんは、やがて同社の広報誌の制作に携わるようになり、その後キッチン用のワゴンをデザインするなど、さまざまな活動へと発展しました。
一方日田市へは、牧野さんは最初、山で働く木こりの人たちを描くために訪れました。そして、なぜか地元の人たちと地域の林業を応援する「ヤブクグリ」という会を発足することになります。「いま、森を見よ!」をスローガンにかかげて行う、「林業体験弁当」の開発や家具づくりなど、ユニークな活動をご紹介します。
私たちの暮らしは徐々に自然と乖離し、今では経済効率や利便性を求めることが当たり前となってしまいました。本展をきっかけに、いま一度生活の原点に立ち返り、本来の豊かさについて思いをめぐらせていただければ幸いです。