世界の海の暮らしを、クラフトを通して紹介していく連続企画、“7つの海と手しごと”。〈第3の海〉として、地中海とトルコのイーネオヤを取り上げます。
慣習・宗教上の理由から、髪の毛をスカーフで覆っているトルコの女性たち。そのスカーフの縁を彩る飾りが、「オヤ」と呼ばれるレース編みです。トルコでは手先の器用な女性が評価されるので、嫁入りの際にはさまざまな手芸品を持参し、披露することになっています。持参品は「チェイズ」と呼ばれ、オヤはその中でも重要な位置を占めるため、嫁入りの何年も前から母親や親類たちと一緒に用意します。オヤには使う道具・手法や素材によってさまざまな種類がありますが、中でも縫い針(イーネİğne)で作るイーネオヤは最も古いとされています。地中海から少し内陸に入った地域では、古くから養蚕が盛んでした。シルク糸産業とともに、イーネオヤは発展していったと考えられています。1本の縫い針と糸のみを使用し、結び目を作るという作業の連続によって、繊細で立体的なモチーフを編み上げていくイーネオヤ。現代では作る人も少なくなってしまいましたが、「オヤがなければ嫁にいけない」という地域もいくつも残っています。
本展では、地中海沿いの町・アンタルヤにトルコ伝統手工芸の店「ミフリ」を構える野中幾美さん所蔵の、貴重なイーネオヤほか映像などの関連資料約100点を展示します。地域ごとの特色や風習などを紹介しながら、トルコの女性たちが母から娘へと伝え続けてきた手しごとの美しさに迫ります。
過去の展覧会
■7つの海と手しごと〈第1の海〉「カリブ海とクナ族のモラ」
■7つの海と手しごと〈第2の海〉「北極海とイヌイットの壁かけ」
シリーズをまとめた特集ページ「クラシー&カワルンと巡る、7つの海と手しごとに触れる旅」もぜひご覧ください。