プログラム

開催予定(参加者募集中)
  • [展示]
  • [セミナー]
  • [ワークショップ]

〈すわる〉を旅する-アジアとアフリカの、あの坐り方と低い腰かけ

都市では失われつつある人類の根源的な〈すわる〉姿を、30年以上に及ぶリサーチから探る展覧会。
写真=渡し船を待つ(マリ、2011年) 撮影:井上耕一

会期:
2019年11月16日(土)~2019年12月08日(日)
時間:
10:00~18:00(金曜は20:00まで) 月曜休み
会場:
ワークショップB(4F) / 生活工房ギャラリー(3F)

私たちの身体は、何を失いつつあるのか

 

井上耕一はデザインリサーチャーとして、1970年代より世界各地に赴き、デザインの視点でのフィールドリサーチを続けてきました。足しげく通ったのは、アジアの主に山間部や国境地帯。そこで井上は、その地で伝統的な暮らしを続けている人々が、いわゆる西洋的な高い椅子を必要とせず、両足の裏を地面につけたまま腰を下ろし、両膝を立ててしゃがんだ姿勢であらゆる行動(くつろぐ、食事をする、料理をする、ものづくりをする、舟をこぐ、勉強をする…)をしていることに気付きます。

 

井上はこの姿勢を「あの坐り方」と名付け、各地に出かけてはこのポーズで何かをしている人々の写真を記録し続けました。「あの坐り方」の周辺には、たまに高さ10センチ未満の低い「腰かけ」が登場します。それは椅子と呼べるような家具然としたものではなく、しゃがんだ体勢をより長く維持するための、あくまで補助具としての役割を担っています。井上は近年より可能な限り、その実物の収集も続けてきました。

 

「あの坐り方」は、椅子に慣れた人にはとてもくつろげる姿勢ではないでしょう。しかし、この姿勢に慣れた人は、椅子があってもその椅子の上に「あの坐り方」ですわることさえあるのです。そして井上は、多くの土偶のポーズや近代までの歴史文献から、日本人もかつてはこの姿勢で生活していたことを発見します。さらには「あの坐り方」が二足歩行をする生きものとしての根源的な排泄のポーズでもあることに思い至り、人類誕生の地・アフリカにも「あの坐り方」を求めて旅立ちます。

 

気候や習慣、人の体型が異なるアフリカ各地でも、「あの坐り方」とその補助具としての腰かけの数々を目撃した井上は、ある日マリのニジェール川の川岸で、いつ来るともわからない渡し舟を待つ女性に出会います。その女性は持参の腰かけにすわっていましたが、井上が頼むと腰かけを譲ってくれました。そして彼女は、そのまま「あの坐り方」で舟を待ち続けたそうです。その一場面には、人類拡散の歴史における長い旅路でも培われた、モノに頼らない本来の身体能力が見て取れるのではないでしょうか。

 

本展では、井上耕一による30年以上におよぶ〈すわる〉フィールドリサーチから、アジアとアフリカの膨大な写真200枚と、30点以上の腰かけを展示。記録映像も交え、歴史的・建築的観点からの座具や、移動・定住と腰かけの関係も見つめながら、旅するように〈すわる〉を探ります。

 

右側の男子は地べたにすわり、真ん中の男子は「あの坐り方」をし、左側の女子は低い腰かけにすわっている。望遠レンズで撮影したもの。こちらに気付くとさっといなくなってしまった。(タイ、1999年) 撮影:井上耕一

 

チャパティを焼く(インド、2008年) 撮影:井上耕一

 

 

主な展示物 *一部を除き、腰かけにはすわることができます

◎アジア(トルコ、イラン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、中国、ブータン、ネパール、インド、パキスタン、ミャンマー、ベトナム、ラオス、タイ、日本)の写真、腰かけ7点ほか

◎アフリカ(エジプト、エチオピア、ケニア、ガーナ、コートジボワール、ブルキナファソ、マリ)の写真、携帯用腰かけ6点、枕兼用腰かけ3点、シャーマン用腰かけ1点、その他腰かけ11点ほか

◎記録映像に見る「アジアとアフリカの、あの坐り方と低い腰かけ」

 

 

「羽毛の飾り紐づくり」(タイ/アカ族/1965年 ※写真左)、「麻織の縦糸の仕掛け」(タイ/メオ族/1965年)、「羊毛刈りとフエルトづくり」(アフガニスタン/パシュトゥン族/1963年)、「パン焼き」(アフガニスタン/タジク族/1963年)、「銀細工」(イエメン/アラビア人/1966年 ※写真右)、「スツールの彫刻と装飾」(中央スーダン/ハッダド族/1964年)、「象牙の腕輪づくり」(西アフリカ/カッセナ族/1955年)、「皮革の加工」(南エチオピア/ダラッサ族、シダモ族/1950年)、「テントづくりと組み立て」(モロッコ/ベニ・ムギルト族/1964年)、「水汲み場での物々交換」(カラハリ砂漠/コ・ブッシュマン/1970年)、「楯と槍の模擬戦」(南東サハラ/ウニア族/1955年)、「打楽器の演奏」(西アフリカ/バウレ族/1968年)

 *上記12作品はいずれも映像百科事典「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」より。会期中会場内でのループ上映

 

会期中、4階展覧会場受付前にて、「東京かんかん」による腰かけなどのアジア・アフリカ民具ショップがオープンします。

関連イベント

1. スライドトーク「人類の移動と〈すわる〉を考える」

移動と定住、そして風土とすわり方の関係について、講師による膨大なフィールドワークの写真から探ります。

日時:11月23日(土・祝)14:00~15:30
会場:生活工房4階ワークショップルームA
講師:井上耕一(デザインリサーチャー)
参加費:500円/50名(申込先着)
申込方法:10月25日(金)10:00より、下記に表示される申込フォームまたは電話(03-5432-1543)にて受付いたします。

 

撮影:杉本勝彦


井上耕一(いのうえ・こういち)
1971~2003年、専門学校桑沢デザイン研究所にて教職。個展「しゃがむ―あの坐り方と低い腰掛」(2003年)、「アジアはキッチュ」(2006年)。著書に『アジアに見るあの坐り方と低い腰掛』(丸善出版、2000年)、『身体装飾の現在Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』(朝倉書店、2006-2010年)がある。

このプログラムに申し込む


2. 身体0ベース運用法「〈すわる〉からトレーニングする」

人間本来の身体機能を再発見する試み・身体0ベース運用法。今回は様々な〈すわる〉姿勢をトレーニングしながら、身体の可能性をひらきます。

日時:12月1日(日)13:00~17:00
会場:生活工房4階ワークショップルームA
講師:安藤隆一郎(身体0ベース運用法)
参加費:1,500円
定員:20名(申込先着)
対象:高校生以上
申込方法:10月25日(金)10:00より下記に表示される申込フォームまたは電話(03-5432-1543)にて受付いたします。

 

撮影:松見拓也 提供:京都市立芸術大学


安藤隆一郎(あんどう・りゅういちろう)

染色作家。これまでのスポーツや武道の経験や近年の子育てを通して運動と感覚の獲得について考察する。2016 年より〈身体0 ベース運用法〉を始動し、展覧会やワークショップを通して身体の見方を伝える。2017年京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAにて、身体0ベース運用法「0 GYM」展を開催。

https://www.shintai-0-base.com/

このプログラムに申し込む


3. 「あの坐り方」でティーブレイク

アジアとアフリカのさまざまなお茶を、「あの坐り方」に挑戦しながらその体勢で味わい、語らいます。

日時:11月29日(金)、12月5日(木) 各日14:30~15:30
会場:生活工房4階ワークショップルームA
参加費:100円(お茶代、おかわり自由)
申込:不要、当日直接会場へ

親密さを示すために、1つの瓢箪を半割にした器から2人で酒を飲む(エチオピア、2006年) 撮影:井上耕一


*

主催:公益財団法人せたがや文化財団 生活工房
特別協力:井上耕一
協力:公益財団法人下中記念財団、株式会社東京かんかん
後援:世田谷区、世田谷区教育委員会

アートディレクション:片山中蔵

関連するプログラム