〈鳥の巣〉は、鳥の家ではありません。鳥が卵を産み、あたため、ヒナを育てるための場所。つまり鳥の巣は、妊婦さんのおなかの中のようなものなのです。まさにそのおなかそっくりの巣をつくるキムネコウヨウジャク、9メートルもある大きな巣をみんなでつくるシャカイハタオリ、羊の毛をフェルト状にした寒さに強い巣をつくるツリカズラ…。巣のかたち、大きさ、材料、つくる場所、つくり方は、鳥の種類によってさまざまですが、どれも新しいいのちを大切にはぐくむための工夫がたくさんつまっています。
『ピン・ポン・バス』『せんろはつづく』など150冊以上の絵本を手がける絵本作家・鈴木まもるさんは、鳥の巣研究家としても活躍されています。30年以上にわたり世界各地で鳥の巣を集め、研究し、『世界の鳥の巣の本』『鳥の巣ものがたり』『鳥の巣いろいろ』などの著作で鳥の巣をさまざまな視点から描いてきました。
鈴木さんはいいます。「飛行機はもちろん、家や衣服、入れ物、さまざまな生活用具など、昔から人は、鳥や鳥の巣から何かしら触発を受け、真似をしたりしながら、物をつくってきたと思います。物だけでなく、求愛の踊りや歌などさまざまな芸術活動や、〈愛の巣〉〈巣立ち〉などの言葉もあるように、暮らしの中にも、鳥から教わってきたものがあると思います」
本展では、『世界の鳥の巣の本』(鈴木まもる著/岩崎書店/2001年)の絵本原画と、鈴木さんのコレクションより鳥の巣の実物を展示し、その魅力と不思議に迫ります。本展が開催される7-8月は、鳥の巣から巣立った若鳥たちが元気に飛び回る時期。この夏、ぜひ鳥の巣の世界に触れにいらしてください。
鈴木まもるプロフィール(絵本作家/画家/鳥の巣研究家)
1952年、東京都に生まれる。東京芸術大学中退。1980年「黒ねこサンゴロー」シリーズで「赤い鳥さし絵賞」、2006年『ぼくの鳥の巣絵日記』で「講談社出版文化賞絵本賞」等を受賞。 絵本作品には『せんろはつづく』『つみきでとんとん』などの人気著書が多数ある。また、1986 年静岡県下田市に転居後、野山で見つけた鳥の巣の造形的魅力にとりつかれ独学で巣の研究と収集を始める。鳥の巣研究家として鳥の巣に関する絵本や書籍も多数出版。1998 年からは、全国各地で鳥の巣と絵画の展覧会も開催している。
キムネコウヨウジャクの巣
〈展示作品、鳥の巣〉
◎『世界の鳥の巣の本』(岩崎書店)より 原画約20点
◎上記絵本に登場する鳥の巣(実物) 約15点
◎鳥の巣を求めて旅したときの写真、スケッチなど
〈3日間の特別展示〉
生活工房の夏の恒例行事「おはなしいっぱい」の3日間には、『せんろはつづく』ほかの絵本原画もおはなし会会場に特別展示します。
会期:8月22日(水)~24日(金)11:00~15:00
*22日のみ11:30~
会場:生活工房4F(「おはなしいっぱい」会場内)
展示作品:『せんろはつづく』(文:竹下文子・絵:鈴木まもる/金の星社/2003年)ほか絵本原画約25点
〈関連企画〉
第18回「おはなしいっぱい」
世田谷で活躍するおはなしの会が大集合!手遊び、読み聞かせ、パネルシアター、すばなしなど盛りだくさんの3日間。午前中は幼児向け、午後は小学生向けの内容です。詳しいプログラムは生活工房ホームページをご覧ください。
会期:8月22日(水)~24日(金)11:00~15:00 *22日のみ11:30~
会場:生活工房4F
共催・出演:世田谷おはなしネットワーク
参加費:無料
申込:不要 当日直接会場へお越しください。