超高齢社会の現代。身体の衰えや記憶力の低下など「老い」を迎えることによって、それまでの自分が失われてしまうのではないかと不安に思う人もいるかもしれません。例えば、現代社会でネガティブに捉えられがちな認知症は、時間と空間の見当がつかなくなる方も多いといわれています。
一人一人の老いに寄り添う先進的なケアで全国的に注目を集める介護施設「宅老所よりあい」の村瀬孝生さんは、老いの世界を生きるお年寄りたちの真面目で滑稽な様子を、豊かなものとして積極的に捉え直す意味を込めて「老人性アメイジング」という言葉を提唱しました。それは、社会規範に適応してきたはずの自分が揺さぶられる戸惑いや、老いゆくことの不可思議さを体験する驚きを丸ごと肯定する人間観に立脚しています。既存の人間観への拘りを解きほぐし、より包括的で自由な人間像を模索する捉え直しの態度は、あらゆる世代の人に響くものです。
1日目は、お年寄りの真面目で滑稽な様子を語る「介護小噺」と既存の音楽観を解きほぐすピアノ作品の演奏を交えながら、老いゆくことの悲喜交々や不可思議さが寿がれるあり方を探ります。2日目は、村瀬さんが自然循環から独自に捉え直した死生観と藤原辰史さんが分解の視点から生死のあわいの豊潤さを論じた『分解の哲学』を紐解き、老いや死のイメージを積極的に更新します。
2月9日(日) 老いと寿ぎ 村瀬孝生 (「宅老所よりあい」ほか統括所長) 坂本彩・坂本リサ (ピアニスト)
会場:東京大学 駒場Ⅰキャンパス 駒場コミュニケーション・プラザ北館2F 音楽実習室 |
14:00~18:00 小噺+トーク+演奏
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120名 3,000円 |
3月22日(土) 死と分解 村瀬孝生 藤原辰史(京都大学人文科学研究所准教授)
会場:東京大学 駒場Ⅰキャンパス 21 KOMCEE West B1F レクチャーホール |
13:00~18:30 小噺+講演+鼎談 |
120名 3,000円 |
※後日YouTubeへの一部公開を前提に撮影が入ります
※タイムスケジュールは進行状況によって変更になる可能性があります
対象:10代以上
申込:2024年12月25日(水)10:00より表示される下記の申込フォームからお申し込みください
プロフィール
村瀬孝雄
「宅老所よりあい」「第2宅老所よりあい」「特別養護老人ホーム よりあいの森」(福岡市)の統括所長。時間割などを設けず “お年寄りの老いに沿う介護” の実践は、NHKで密着番組が放送されるなど多くの注目を集め、ユーモア溢れる語りで各地の講演会を沸かせている。主な著書に「シンクロと自由」(医学書院)、『ぼけてもいいよ』(西日本新聞社)、『増補新版おばあちゃんが、ぼけた。』(新曜社)他。
坂本彩・坂本リサピアニスト。第70回ARDミュンヘン国際音楽コンクールピアノデュオ部門にて日本人初の第3位入賞・聴衆賞・特別賞受賞。第7回国際ピアノデュオコンペティション第1位・パデレフスキ賞受賞。第21回シューベルト国際ピノデュオコンクール第1位。2021年度ブルーノ・フライ音楽賞受賞。2023年度福岡市文化賞受賞。テレビ・雑誌などメディア出演多数。11月デビューアルバム「Duettist」(fontec)リリース。
https://www.pianoduosakamoto.com
藤原辰史
京都大学人文科学研究所准教授。歴史学者。研究テーマは食と農の現代史。主な著書に『決定版ナチスのキッチン「食べること」の環境史』(共和国|第1回河合隼雄学芸賞)、『給食の歴史』(岩波書店|第10 回辻静雄食文化賞)、『分解の哲学 腐敗と発酵をめぐる思考』(青土社|第41回サントリー学芸賞)、近著に『縁食論 孤食と共食のあいだ』(ミシマ社)、『植物考』(生きのびるブックス)他多数。
山内泰(進行)
1977年生まれ。NPO法人ドネルモ代表理事。一般社団法人大牟田未来共創センター(通称:ポニポニ)理事。株式会社ふくしごと取締役。東京大学先端科学技術研究センター特任研究員。芸術工学博士(美学)。地域で対話の場づくりに取り組む一方で、問いと対話のメディア「湯リイカ」(主催:ポニポニ)などさまざまな有識者との対話企画をコーディネート。主な論文掲載に『デザインに哲学は必要か』(共著、武蔵野美術大学出版)、「『わたしの役柄』が表現すること 哲学者・國分功一郎さんとの対話から」(「精神看護」23巻4号、医学書院)など。
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アーカイヴ
「老人性アメイジング! 寿ぐ老いとベートーヴェン」(2024年2月開催)記録動画を公開中。