太平洋戦争の終戦から80年、世田谷区の平和都市宣言から40周年*を迎える本年度、生活工房では「子どもの暮らし」と「平和」について考える展覧会を開催します。
監修者の春日明夫氏(芸術学博士、東京造形大学名誉教授)は、日本における造形教育、子どもをめぐるデザイン研究の第一人者であり、造形教育の題材として世界中の玩具や関連資料を収集し、そのコレクションは6,000点を超えます。本展はその中から戦前~戦中~戦後に製作された双六(すごろく)・絵本・雑誌・玩具・文具・生活用品などを展示します。
大正モダニズムの影響から洗練された図案や意匠が生まれた戦前、戦中の軍部の権力と統制、戦後の連合国軍の占領下時代とそして高度経済成長期。それぞれの時代の社会情勢や教育、世相や流行が、子どもたちの暮らしには色濃く反映されています。特に戦時統制下は、当時の作者たちが制約や抑圧の中でぎりぎりの工夫をしながら創造、表現した苦悩がうかがえるものも多々あります。また、アートやデザインの影響力がプロパガンダ(戦意高揚)に利用されていた事実を伝えてくれます。そして戦後は一変して、世界の友好と平和、科学技術の進歩、マンガやアニメの正義の味方、ヒーローやヒロインなどがモチーフとなり、終戦直後の無彩色な社会が鮮やかに色彩を取り戻していく様が、展示資料には映し出されています。
おばあちゃんやおじいちゃん、お母さんやお父さんが子どもだった時代、そしてあなた自身の子どもの時代。昭和を生きぬいた、かつての子どもたちの可愛らしく楽しい、哀しくも美しい遊びや学びの道具から「戦争と平和」、「令和の子どもたちの未来」について考えてみませんか。
*世田谷区は、核兵器の廃絶と世界に平和の輪を広げていくことを誓い、戦後40年の日にあたる1985年(昭和60年)8月15日に、国の内外に向けて『平和都市宣言』を行いました。
春日明夫
1953年東京生まれ。東京造形大学名誉教授。芸術学博士、教育学修士。専門分野はキッズデザインなど、子どもをめぐるデザインや造形活動。主な研究内容は、造形教育学の視点からの創作玩具研究、民族・民芸の造形比較文化、ワークショップ活動。その研究の一環として世界の玩具や遊具、関係資料を収集している。
【春日明夫コレクションの関連展示】
こども部屋でみる「戦争と子どもたち」
2025年8月1日(金)~2026年3月29日(日) 金土日祝のみ開館